TATAMI Tone

音楽の話をしようと思います、みこです。

題名は何を表しているかと言うと、それは日本人の出す音を聞いたある外国人の感想です。

 

大勢を一括りにするのは嫌いですが、この言葉は素晴らしく日本人の特徴を表しているように感じます。初めて聞いたときは畳の柔らかさ滑らかさや、岩にしみ入る蝉の声の情緒を思い出しました。

 

しかし残念ながらこの言葉は褒め言葉ではないのです、ことクラシックに関しては。ここにおける畳の意味とは張り合いの無さ、もしくは気が抜けているということなのです。

 

クラシックの土台はどうしようもなくヨーロッパに在ります。ヨーロッパの生活習慣、特に言語がクラシック音楽の始祖である以上我々日本人はそれの真似をしなければなりません。

 

一応注意として日本の民族音楽を否定するつもりではありませんし、クラシックに日本の要素を取り入れることに反対しているつもりでもありません。日本独特の音階などは立派にクラシックの要素になり得ますし囃子や演歌も立派な文化です。

 

ではヨーロッパと日本の何が違うのでしょうか。

 

ありきたりですがまず言語が違います。ここで重要なのは文構造などではなく発音と韻律です。

 

端的に言えば発音の強さが違います。英語学習者なら日本人のpの発音はネイティブにはbに聞こえてしまうということを知っている人も多いでしょう。ネイティブのようにはっきりとした発音をするにはお腹から支えて口内の圧力を高めることが必須です。日本語は発音が比較的曖昧ですからこの差を意識することが大事です。

 

例えばリコーダーのタンギングは「トゥー」だと習ったと思いますが、これは英語で言うtの発音を日本語で表そうとしたものです。当然無理があります。日本語の発音は弱くタンギングにはなり得ません。ボイスパーカッションで説明した方が今の時代あってる気がします。さらにここで重要なのは子音の方であり、タンギングに関して言うなら「タッ」とするべきでしょう。音楽は言葉ですが日本語ではありません。

 

発音の差に興味があるならIPA(国際発音記号)について調べて見てください。面白いですよ。

 

続いて韻律について。ヨーロッパ系の言語は意味の最小単位である単語が音節で区切られ、そしてこの音節は音符に見立てることができます。アクセントは強拍に位置します。つまり向こうの言語はそれ自体音楽として機能するのです。

 

I love you. でアイ・ラブ・ユー。3拍。ラブのブに母音はないですからvの音は後ろにくっつきますよ。

I can speak English. でアイキャン・スピーク・イングリッシュ。3拍。キャンが8分の位置、リも8分でシュがぴったり16分の位置です。この16分も面白いですね。16分でタッタタッタのリズムを初心者はよく三連符と間違えますから。ネイティブは混同しないんでしょうか?

 

日本語の場合リズムはありますが、母音が多い分非常にゆったりとしたリズムになり8分や16分のリズムは基本的にありません。特にヨーロッパ系の言語において重要な単語は一母音だけで構成されている、という点は日本語と全く違います。日本語でもよく使う動詞は2文字か3文字で構成されますがそれは終止形の話でありさらには「◯る」の「る」は弱く発音できず拍感が定まりません。それはシンコペーションだとか冗談言うなよ。「こっちに来い」で2拍ですが一般性はないです。「為せば成る」とか思いつきましたがこれは俳句のリズムであってクラシックではありません。

 

他にヨーロッパと日本の違う点として、練習環境があります。

 

これもありきたりですが気候、特に湿度が違うせいで響きやすさが違います。響きやすさに関してもう一つ、向こうは昔は宮廷とか教会とか石の中で演奏してたんですよ!それはもう、よく響きます。お風呂場なんて比じゃないです。反対に日本人は木の中とか畳の上で演奏しますから音はどんどん吸われます。つまりどうなるかというと日本人は自分の出す音を丸く包んで耳障りにならないような音作りをします。ヨーロッパ人は周りがガンガン響きまくって音が響きに埋もれますから発音ははっきりと、芯は太く出します。教会で賛美歌を歌っているのをイメージすると静謐さや荘厳さを思い出すでしょうが、近くで聞いてみると実際は声を張り上げて歌っているのを多くの日本人は知らないと思います。

 

現在ではホールというそれなりの統一規格がありますからマシになってるでしょうが、ホールで練習する機会なんて僕みたいな趣味でやってる人間にはありませんので結局は普段の練習場所に合わせた音になってしまいがちです。お風呂場は案外いいですよ。鼻歌ではなく実際に歌ってみてください。子音を立てる意味が分かるはずです。楽器を持ち込んだことはありませんけど。

 

どうでしょう、TATAMI Toneの意味は伝わりましたか?最後に僕が使っているタンギングを紹介します。フルートのタンギングです。

 

基本的に5種類使い分けています。t,d,p,k,gです。d,p,gは自分がそう呼んでいるだけで一般的ではないと思います。tは最も一般的なタンギングです。上歯の根元に舌をつけます。dはtより舌を奥の方につけます。tよりやわらかい発音でスラースタッカートや暗めの音、高音を柔らかく出したい時に使ってます。pはアパチュアを舌で塞いでタンギングします。とてもクリアな発音になりますからピアノでスタッカートするときやスラーの頭で使っています。圧力を簡単に作れる変わったタンギングですのでお腹の力を抜いてしまいがちですが絶対に支えは保ってください。k,gはダブルタンギング用のタンギングでgはkよりも柔らかく、喉の上の方でタンギングします。同音連打ならk、連符ならgを使っています。d,gは柔らかいと言いましたがどのタンギングもお腹の支えは同じです。

ついでにフラッタータンギングを含めると2種類増えます。舌を巻くのと喉を鳴らすタンギングです。遺伝的に巻き舌できない人もいるらしいですが喉だけで足ります。低音のフラッターは喉じゃないとできません。巻き舌の方が強いタンギングになりますからフォルテの高音のときは巻き舌を使っています。喉をならすのが苦手な人が多いみたいですが自分はなぜか苦労せずできるようになりました。ドイツ語やフランス語のrの発音と同じなんですが、うがいするように以上の表現が見つかりません。まあフラッターなんて使う機会ありませんけど。