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PET検査の仕組み(第6回)「誤差要因の補正(2):吸収と感度の補正」

(著)山たー

 今回は生体内における吸収と検出器の感度による誤差の補正について説明します。補正を考えるためにPET検査のモデル化を行い、そのモデルを解析することを考えます。

 

PET検査のモデル化

 まず投影角を$\theta$, 位置座標を$r$とします。これは第2~4回までの定義と同じです。次に陽電子放出核種で標識した薬剤を投与したときの計測データをエミッションデータ(Emission data)(※1)と呼び、$E(r, \theta)$とします。さらに、真の線和(全ての補正をした真の同時計数分布)を$P(r, \theta)$, 被写体での放射線の減弱率(※2)を$A(r, \theta)$, 検出器感度のばらつき(※3)を$D(r, \theta)$, 偶発同時計数を$C(r, \theta)$, 散乱同時計数を$S(r, \theta)$とします。

 ここで$E(r, \theta)$は、

\begin{align} \frac{E(r, \theta)}{D(r, \theta)}=A(r, \theta)\cdot P(r, \theta)+C(r, \theta)+S(r, \theta) \end{align}

と表せます(その他の雑音成分は存在しないとみなします)。

※1:被写体の投影とほぼ同じですが、被写体による光子の吸収を受けています。その他にも検出器感度の影響を受けています。
※2:ただし、$A(r,\theta)$は0(完全吸収)から1(完全透過)までの値をとります。
※3:センサが返す値$x(r,\theta)$が正規分布$N(\mu,\sigma^2)$に従う場合、真の値$x_0$からの平均値のずれ$(x_0-\mu)$を「偏り」と呼び、標準偏差$\sigma$を「ばらつき」と呼びます。ゆえに$D(r,\theta)$は検出器が返す値が従う分布の標準偏差(真の値が同じ場合の標準偏差)であり、「$D(r,\theta)$で割る」という操作は標準偏差を全ての$r, \theta$に対して等しくするということを意味します。

PETにおけるスキャン

 PET装置で計測する際には様々な条件における放射線を計測することができます。まず、外部から放射線を当てて放射線吸収物質の分布を測定することをトランスミッションスキャンといい、得られた投影データをトランスミッションデータと呼びます。また、PETスキャナ内に何もない状態で外部から放射線を当てることによるスキャンをブランクスキャンといい、得られた投影データをブランクデータと呼びます。スキャンとそのデータについては次の図を参考にしてください。

 

(図1)PET装置におけるスキャン

Illustration

 

(図2)スキャンデータ

Illustration

 なお、トランスミッションスキャンとブランクスキャンでは、(図1)のように、検出器の内側の円周上において放射線源を等速で円運動させるのが一般的です。ただし、固定された円柱状の放射線源を用いる場合もあります。

 

スキャンデータによる補正

 トランスミッションデータを$T(r,\theta)$, ブランクデータを$B(r,\theta)$とします。すると$T(r,\theta), B(r,\theta)$は$D(r, \theta), A(r, \theta)$および外部線源の投影$R(r)$を用いて次のように表せます。 \begin{align} \frac{T(r, \theta)}{D(r, \theta)}&=A(r, \theta)\cdot R(r)\\ \frac{B(r, \theta)}{D(r, \theta)}&=R(r) \end{align} なお、外部線源は放射線源を等速で回転させるため一般に円形であり(固定された外部線源を用いる場合もその形状は円柱であり、断面は円形です)、その投影$R$は$\theta$に依存しません($R(r)$はばらつきがないと仮定したときのブランクデータ$B(r,\theta)$に一致します。また$R(r)$は外部線源を回転させる半径から算出することができます)。

 $C(r, \theta), S(r, \theta)$は第5回で説明したような補正によって除去されたとすると、 \begin{align} \frac{E(r, \theta)}{D(r, \theta)}=A(r, \theta)\cdot P(r, \theta) \end{align} となります。よって真の線和$P(r,\theta)$は \begin{align} P(r,\theta)=\frac{E(r,\theta)\cdot R(r)}{T(r,\theta)} \end{align} と表せます。

 これより吸収と感度の補正には「理論上は」トランスミッションデータさえ計測すればよいと考えられます。しかし、トランスミッションデータは一般にノイズが大きいので、式(2)、(3)により \begin{align} A(r,\theta)=\frac{T(r,\theta)}{B(r,\theta)} \end{align} を求め、式(4)により

\begin{align*} P(r,\theta)&=\frac{E(r,\theta)}{A(r,\theta)\cdot D(r,\theta)}\\ &=\frac{B(r,\theta)}{T(r,\theta)}\frac{E(r,\theta)}{D(r,\theta)}\\ &\approx Acf_{2D}\cdot E(r,\theta)\ \ \ \left(Acf_{2D}:=\frac{B(r,\theta)}{T(r,\theta)}\right) \end{align*}

として真の線和$P(r,\theta)$が得る方が一般的です。ここで用いた$Acf$のことを吸収補正計数(attenuation correction factors)と呼びます。ただし、2Dという添え字をつけているのは2次元スキャンの場合を考えているためです。

 最後に真の線和$P(r,\theta)$に第2~4回で説明した逆Radon変換を行い、断層画像を求めます。

参考文献

・日本医用画像工学会(2012)『医用画像工学ハンドブック』, 日本医用画像工学会

・福田信男・福田 寛(1990)『ポジトロン核医学と生体核磁気共鳴スペクトル法(上巻PET編)』, アイピーシー

・水田哲郎(2011)「第2回:PETのデータ補正」,『Medical Imaging Technology』,29(1), pp.47-50

・北村圭司(2001)「PETにおけるデータ補正と画像再構成」,『Medical Imaging Technology』,19(6), pp.462-467