はつゆめ。

あけましておめでとうございます。お正月は親戚のお家に引きこもっております、ざっきぃです。

 

大学生をしていると、こんなに長い時間を家で過ごすことってなかなかないんですよね、忙しくて。でも、こうして一週間近く家に身を置くと、やっぱり家っていいなあと思います。家や近所というコミュニティを大事にするのはアジア人の特徴で、西欧ではお正月に親戚同士で集まるといった行事もないそうです。すっかり欧米化したスマートな社会に慣れてしまった我々ですが、年の初めくらいは自らの民族的なアイデンティティを再確認するのもいいでしょう。

 

ところで皆さん、初夢はご覧になりましたか?元旦の日の夜に見ると縁起のいいものとして、一富士二鷹三茄子というのがあります。富士山とかはわかるんだけど、なぜまた茄子なんだろう?調べてみると、物事を「成す」にかけているとか、つるつるで「毛が無い」ことを「怪我ない」にかけたんだとか。徳川家康が初物のなすびを愛したからだ、という説もあるそうです。いかにも日本古来の伝統みたいに「一富士二鷹三茄子」と言っていても、実は江戸時代の言い伝えが起源だなんて、不思議じゃないですか?年越しそばの風習も18世紀頃がスタートだといいますし、日本人の思想は案外、古代や中世には根ざしていないのかもしれません。

 

それはいいとして、そもそも富士山とか鷹とか、そんな具体的なものって夢には出てこないだろう、夢ってもっと抽象的な概念じゃないのか、と小学生の時、よく疑問に思ったのを覚えています。夢って、それについて語るときは「誰がどうしてて・・・」みたいなストーリーの枠に入れられますが、実際の形式はもっと自由ですよね?赤とか黄色とか、目に見えている状況は単純な図形でしかなくて、それをもう一人の自分が客観的に解釈しているという感じかな。カンディンスキーの絵画を鑑賞しているみたいな。夢を脳波なんかで可視化することはできるんだろうか?

<カンディンスキー「コンポジション」>

 

でも僕、今年は見てしまったんです。非常に具体的な初夢で、覚めてから数時間が経った今でも、その場面を鮮明に回想することができます。天皇陛下が退位されて次の元号が決まる時期ですが、それを決める最終会議の場です。テレビカメラを探しても見つからないので、おそらく極秘なのでしょう。次期天皇となられる皇太子殿下が、パワーポイントのファイルを開きます。緊張が走る瞬間。やがて殿下がポインターを取り出し、おもむろに話し始めました。

 

「日本は戦後、経済面でも外交面でも、驚異的な復興を成し遂げた。それに続く平成時代には、彼らが相談役として様々な助言を行い、世界に輝く国家となった。しかし、この時代が終わろうとする今、復興を支えた先輩はもういない。これからは我々の世代が、我が国のかじ取りを担う、すなわち世代交代の時なのである。世代交代とは、新陳代謝と言い換えられる。」

 

そして、真っ白だった画面に、金色で「新陳代謝」の文字が浮かび上がりました。

 

「『陳』と『代』は、画数的に縁起が悪いと、専門家から伺った。」そして、この二文字が色褪せ、灰色になりました。「よって、次の元号を、『新謝』としたいと思う」。

 

Sの韻を踏んでいて美しい響きだな、そういう手があったか、と思いました。ですがものの数秒もしないうちに、不安が込み上げてきました。「新謝」の元号には「謝」の文字が含まれます。もしも、中国や韓国への戦争責任に対する「謝罪」と結びつける人がいたら、厄介なことにならないか。皇室が政治的なメッセージを発したと、誤ったシグナルが送られないか・・・。

 

部屋を出ると、大きなホールに報道陣が詰めかけています。殿下自ら、記者会見を開かれるのでしょう。ざわつきが、司会者の合図をかき消しています。テレビカメラの間をすり抜けながら、でもこの「謝」という漢字で世界が平和になるなら、それは何にも増してよいことだな、と思い直しました。多分、皇太子さまはこの漢字を和解への第一歩として、意図的に使ったのだと、この時には確信していました。「謝」という字は「感謝」の「謝」なのだから、と考えながら、人込みをかきわけかきわけ、寒い家路につくのでした。

 

改めまして、2018年もよろしくお願い申し上げます。