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焼骨と色

(著)山たー

 新年早々おめでたくない話なのですが、先日身内が亡くなりました。今回はその葬式後の火葬場での話であります。

 火葬場では遺体を焼いて骨だけの状態にするわけですが、ふと焼けた後の骨(焼骨)を見ると赤、紫、緑などとカラフルに色づいておりました(火葬場では撮影禁止ですので写真はありません)。この色は何だろうか、と思ったわけです。焼かれる前にこの様な色は付いていないので、当然焼いたことによって色が付いたわけであります。遺体に添えた草花の色が写ったのでしょうか。いや、焼却する温度と位置を考えれば、骨が表面に現れるころには有機物(インディゴやアリザリンなどの色素)は全て炭化しているだろう。うーん。

 そこで、何故色が付いているのか、と火葬場の職員さんに聞くと、炎色反応によるものである、ということだそうな。調べてみると確かにそういうことを書いているサイトがあった。

遺骨について知っておこう

 

 上記のサイトには以下のように説明されている。

人間の体内には様々な金属が存在します。高温で焼かれるため体内の金属が炎色反応を起こしその色が遺骨に焼き付いたのです。

少し納得したが、疑問点が残る。それは、「色が遺骨に焼き付く」という部分である。間違ってはならないが、色は物質の本質的な性質ではない。

 (白色光に当てられた)物が色づいて見える理由を以下に述べよう。物質は光を受けると、原子内の電子が励起する。その励起する際に、電子の元のエネルギー準位と励起した後のエネルギー準位の差に応じた光を吸収する(E=hνの式による)。そして吸収された光以外の波長の光は反射される。この反射光を全て重ね合わせたのが物質の色になるのである。もちろん可視光域外の光が吸収されても私たちの目には影響しない。特に金属が色づいて見えるのはエネルギー準位の差に対応する波長が可視光域に合致するからである。

  次に炎色反応とは何かと言えば、熱によって電子が励起し、基底状態に戻る時に発色する現象である。それゆえ、「炎色反応の色が焼き付く」という表現は少しおかしいと考えられる。

 では何の色が付いているのかと言うと、消去法で考えれば、金属化合物の色だろう。そして、広範囲ではなく、一部が色づいていることを考えれば体内微量金属元素である鉄、亜鉛、銅の化合物が主であると考えられる。当然ながら、棺を構成する金属、焼却施設内の金属粉末によるとも考えられるが

 似たようなものを考えれば、陶器に色を付けるのが近いだろうか。人工関節にファインセラミックスが用いられるとも聞く。陶器の周りを覆う釉薬には色を付けるために金属化合物が入れられる。

 

 結局、結論は「金属化合物の色」である。ただ、炎色反応で色が焼き付く、ということが否定できないのが心残りである。もし、炎色反応の実験をする予定がある人は炎の上に白い石(コンクリートの破片)等を固定して色が少しでも写るかどうか試してほしい。