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任意の無理数に対する有理数列は存在することの証明

「任意の無理数に対する有理数列は存在する」ということについて, 証明の方針の説明をし, その後に証明をします.
 無理数を$x$, 有理数列を$\{y_n\}_{n=1}^{\infty}$とします. そして, $y_n$を $$y_n=(xを小数点以下第n桁で切り捨てた数)$$ とします(もちろんこれ以外にもあります). 文字で表わすとこうなるのですが, 数式で表わすと, 床関数$\lfloor{x}\rfloor$を用いて, $$ y_n=\frac{\lfloor10^{n}x\rfloor}{10^n} $$ と表記できます.
 まずこの数列がどのようなものかというと, $x=\pi$としたとき, $$\{y_n\}_{n=1}^{\infty}=3.1, 3.14, 3.141, 3.1415\cdots$$ というようになるものです. また, 床関数(floor function)$\lfloor{x}\rfloor$は大学入試でよく使うガウス記号$[x]$と同じ意味です.
 ついでに後で使うので, 天井関数(ceiling function)$\lceil{x}\rceil$の説明も一緒にしておくと, $$\lfloor{x}\rfloor=(実数xに対してx以下の最大の整数)$$ $$\lceil{x}\rceil=(実数xに対してx以上の最小の整数)$$ という意味になります.
 さて, 上のように設定した$y_n$に対して, $$|x-y_n|<10^{-n}$$ が成り立っています. こいつを利用して, 数列の極限の定義より, $y_n\to{x}\ (n\to\infty)$となることを示してやります. そのためには, $n>N$のとき, $$|x-y_n|<10^{-n}<10^{-N}\leq\varepsilon$$ となるような自然数$N$を適当に設定してやればいいのです. ここで, $$10^{-N}\leq\varepsilon$$ $$-{\log_{10}\varepsilon}\leq{N}$$ が成り立っていますから, 先ほど説明した天井関数を用いて, $$N=\lceil{-{\log_{10}\varepsilon}}\rceil$$ としてやれば, これは上の不等式を満たしますので, 無事に証明できるわけです. というわけで以下に証明を示します.
任意の無理数を$x$, 有理数列を$\{y_n\}_{n=1}^{\infty}$とする. ここで, $$ y_n=\frac{\lfloor10^{n}x\rfloor}{10^n} $$ とする. 任意の正数$\varepsilon$に対し, $N\:=\lceil{-{\log_{10}\varepsilon}}\rceil$とすれば, $n>N [n\in\mathbb{N}]のとき, $ $$|x-y_n|<10^{-n}<10^{-N}\leq\varepsilon$$ が成り立つので, $$\lim_{n \to \infty} y_n=x$$ となる. よって任意の無理数に対する有理数列は存在する.

 ここまでが証明です. 「任意の無理数に対する有理数列」で検索したら別の証明が出てきますので, そっちを参考にしてもいいかもです. 「有理数の稠密性(ちゅうみつせい)より」と一言でいうこともできます.

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コメント: 1
  • #1

    絵本のまち有田川 (金曜日, 24 1月 2020 13:44)

    自然数は、[絵本][もろはのつるぎ]で・・・