(著)山たー
混成軌道の考えと結び付けて構造結果を記していく。なお混乱しないように、混成軌道は分子の構造を考えるために生み出された概念であることを強調しておく。
Lloyd N.Ferguson,『構造有機化学(上)』,東京化学同人,p.24 には次のように書かれている。
『混成は共鳴と同じく現象でも力でもないことを理解すべきである。混成、共鳴はともに分子を記述し、観測される分子の性質を説明するための道具ないし術語である。
量子力学および波動力学も分子を記述する一つの方法であり、この方法によると方程式により物質の荷電粒子の波動性を記述しそれを用いて結合エネルギー、原子間隔などの諸量を得るのであるが、H2分子より重い分子では波動方程式は複雑になり実験と合致する波動方程式の解を得るためには考案、直感および実験結果からの結論を用いて近似する必要がある。』
また、これに関連して、共鳴についても述べておく。Lloyd N.Ferguson,『構造有機化学(下)』,東京化学同人,p.324には次のようにある。
『ここで強調しておきたいのは、共鳴は本来存在する効果ではないということである。われわれが共鳴エネルギーについていうとき、共鳴エネルギーが観測された効果を引き起こすという意味ではないのである。それどころか共鳴というものは単に観測された事柄を構造式によって解釈するために考えられたものにすぎない。“分子または構造が共鳴によって安定化される”という表現が一般に用いられているが、真の意味は文字通りではない。わずわしい文章を避けるためにこのようにいわれるにすぎない。』
共鳴が実際に存在するものではないということは、
(共鳴エネルギー)=(化合物の実際の、あるいは実験的な生成熱)-(最も安定なVB構造についての計算された生成熱)
ということからも分かるであろう。
1回生では「実際に存在する現象」と「説明のための概念」が混ぜこぜになって説明され、いったい何が何やら分からなくなりがちなので注意しよう。
sp混成 (直線形)
CO2
sp2混成 (正三角形)
BCl3
sp3混成 (正四面体形)
NH4+
sp混成 (直線形)
[Ni(CN)4]2-
d2sp3混成(正八面体形)
[Fe(CN)6]4-
dsp3混成(三方両錐形)
PCl5
d3sp3混成(五方両錐形)
IF7
d4sp3混成(十二面体形)
[Mo(CN)8]4-
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